6月1日(土)長珍酒造様の蔵見学に行ってきました。
長珍さんの蔵見学は1年に2,3件のみ対応されているとの事で
とっても貴重な体験をさせていただきました、ありがとうございました。
歴史を感じさせる建物に立派なのれん。
まずはこの天保時代の母屋で蔵の歴史や蔵のある津島についてのお話をしていただきました。
津島は昔、港町として栄えた土地。
地面を掘ると貝殻などが出てきたりしたそうで、
海に近い土地柄ゆえに酒造りに使われる水質はミネラルの多い硬水になります。
そう言った土地柄、水質によって長珍さんのお酒はいわゆる「男酒」と表現されるタイプで
出来上がりの時は荒々しい味わいですが、時間と共にまとまり出て、うまみが増すのが特徴です。
(ここで言う男酒の代表格と言えば灘の酒、女酒は伏見が有名で、
でき上がりの段階で飲みやすくキレイなお酒と言うのが女酒の特徴です。)
長珍さんには蔵が3つあって、そのうち2つはなんと江戸時代に建てられた蔵が残っています。
現在は昭和に建てられた昭和蔵でお酒の仕込みを行っています。
まずはその昭和蔵から見学です。
桑山さん曰く「1にも2にも良い蒸し米を作る事が一番」との事で
長珍さんでは今でも和釜で蒸し米を作っています。
この和釜の上に巨大なこしき【甑】(今でいう蒸籠)をのせて蒸し米を作ります。
なんと和釜の下にはバーナー室がありました。
和釜を使い続ける理由は空焚き状態になると乾いた蒸気が発生して
乾いた蒸気だと外はパリッとして、中がふっくらした蒸し米ができるからだそうです。
ものすごいシンプルな道具(水位計ですね)と桑山さんの経験で
釜に入れる水の量を天気や時期によって調節して、良い蒸し米を作っています。
蔵の2階には麹室があり、酵母の培養作業するところとなっています。
2階から大きな漏斗を使って麹をタンクに投入できるように、床には穴が空いてます。
麹室は2つあって、そのうちのひとつは鑑評会用の酒造りに使用される麹室になっています。
酒蔵見学中いたるところにお札や注連縄があり
酒造りってほんとに神聖で神秘深いものだと改めて気付かされましたが
この麹室の雰囲気は近寄り難さすら感じる独特のものでした。
麹室の壁は米の籾殻を断熱材として使用しています。
お米から作るお酒だけに、無駄がないですね。
この麹室への蒸し米の運搬なども全て人力で作業されているそうです。
「酒は工業製品ではなく、育てるもの」と言うお考えのもとに
ポンプやエアシューターなどの機械を使う事は避けているのだそうです。
このお考えは長珍さんの酒造りの工程において随所に感じられるものです。
酵母の培養も時間をかけて育てる事で強い酵母ができるそうで
長珍さんのお酒に感じる力強さに通じるのかなと思いました。
タンクは開放タンクと密閉タンク(奥のグリーンのタンク)を併用しています。
開放タンクは長珍さんの特徴である、酸のあるガツンとした酒造りに合っているそうです。
密閉タンクは主に大吟醸など品格のある酒造りに使用しています。
開放タンクは醸造時にも大変清潔さに注意を払われていて
タンクの内側に付いた泡もキッチンペーパーを使用して
徹底的に拭き取るようにしているそうです。
泡はアミノ酸や糖分で(同時に雑菌とも言える)、それが混入すると味や酒質に影響するため
使い捨てのペーパーで手間を惜しまずに拭き取っているのだそうです。
お酒の熟成は
マイナス温度熟成→当店でも人気の「生生熟成5055」がこの熟成方法
低温熟成→ひやおろし
常温熟成→当店オリジナルのお酒「木屋傳右衛門」はこの熟成方法
の3種類。
常温熟成は土地や年によって気温が異なるので味が変わってきますがそれが地酒らしさ!
と言うお話に、ほんとに日本酒って自然と共に作られる
ナチュラルでおもしろいものだと思いました。
ちなみにこの108タンクには当店オリジナルの木屋傳右衛門が入っています!
会えてうれしかった!
傳右衛門さんと現在の木屋当主である社長の貴重な2ショット!
タンクから瓶に詰めるのも長珍さんのこだわりが感じられます。
タンク直汲みと言ってタンクにホースをつないで一本ずつ手で瓶に詰めています。
とても手間の掛かる仕事なので1日に2人で1000本程度しか瓶づめできないそうです。
瓶づめって機械でやっているイメージですが
ここにも桑山さんのこだわりが出ていて、やはり極力機械は使用せずに
「お客様に本物の酒の味をダイレクトに届けたい」と言う思いから
この手作業で瓶づめをされているのです。
無濾過にこだわるのも、きれいな酒ではなく、うまい酒を目指しているからこそ。
搾り上がった段階でのうまさにこだわるからこそ、ごまかしの効かない
無濾過、直汲みで酒造りをされているのです。
圧搾機、瓶詰めした酒の貯蔵コンテナ、
江戸蔵にある瓶燗火入れ作業の機械なども見せていただきました。
圧搾機も圧のかけ方を細かく調整して使われていたり
貯蔵コンテナは輸送用のリーファーコンテナの冷蔵機を取り替えて使用していたり
(住宅地エリアに蔵があってコンテナについてる冷蔵機そのままだと
うるさいのでわざわざ取り替えている)
随所にこだわりや工夫を感じました。
瓶燗火入れも独特で、とても手間がかかっています。
1回で30本程度しか火入れできないそうです。
これによってガス感の残る独特な味わいが生まれます。
そして噂に聞いていた軽トラ作業台がありました!
ちょうど軽トラの荷台の高さがラベル貼りやしんぶんし包装の作業にちょうど良いから
机とかではなく軽トラを使っていると以前から聞いていたのですが、ほんとでした!
令和ver.などセンスあふれるしんぶんし包装はココで行われているんですね。
ラベルも桑山さんがフォントサイズなどを毎年微調整してくつられていて
うすにごりなど毛筆書体のラベルは桑山さんのお姉さんの文字なんだそうです。
蔵見学の後にはそれぞれのコメントを書き出しながらの9種類の試飲がありました。
酒米の使い分けについては、その米の特徴が前面に出るような造りを意識していて
その特徴が食中酒として、ペアリングを楽しむ要素にもなるとのこと。
いつか地元のお米を使った酒造りもしたいとお話されていました。
試飲をしながら、桑山さんからペアリングのあれこれを伺う事ができましたが
ご自分のお酒に対して明確な組み合わせの事例をとてもたくさんお持ちで
色々と試してみたくなりました。
桑山さんの直々のご案内で改めて酒造りの素晴らしさや長珍さんのこだわりを感じる事ができて
今まで以上にファンになりましたし、
もっともっと多くの方にこの素晴らしいお酒を知っていただきたいと思いました。
長珍さんをあとにする時、桑山さんご夫妻と大奥様が私たちの姿が見えなくなるまで
ずっとお見送りをして下さった姿がとても印象的なのですが
ほんとうに桑山さんをはじめ長珍酒造さんの酒造りをされている方々の人柄が
お酒に反映されているのだと強く思った蔵見学となりました。
ビアブティックキヤでは長珍さんのお酒を色々と揃えていますし、
店内でグラスで飲めるようにもしています。
そしてなんと!!通販でも買えます!!
https://www.belgianbeer.co.jp/products/list.php?category_id=387
是非皆さんも長珍さんのお酒を飲んでみてください。